肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)

四十肩・五十肩について

四十肩・五十肩について40代から50代にかけて、肩の痛みが突然現れ、電車のつり革に掴まることができなくなることがあります。この痛みは一般的に四十肩・五十肩と呼ばれますが、日本整形外科学会では肩関節周囲炎と正式に呼ばれています。

四十肩・五十肩の主な原因は、加齢による肩の関節周辺の変化です。骨や軟骨、腱や筋肉が炎症を起こすことで痛みが生じます。症状は人によって様々ですが、自然に治ることが多いです。ただし、時には関節包が癒着してしまい、凍結肩と呼ばれる状態に進行することがあります。この状態になると、痛みが慢性化し、肩の動きが制限されます。

四十肩・五十肩の症状

四十肩・五十肩の症状は多岐にわたり、他の関節や筋肉の疾患と類似することがあります。特に以下の症状が見られる場合、上腕二頭筋長頭炎や腱板損傷、石灰沈着性腱板炎などの可能性もあります。

  • 肩が痛く腕を上げられない
  • 背中に腕を回せない
  • 肩関節が回りにくく、服の脱ぎ着が不自由になる
  • 電車のつり革につかまると痛む
  • 寝返りをするだけで痛みで目覚める

当院では、これらの症状が見られる場合、まず問診で痛むタイミングや動作を詳しく伺います。次に触診などで運動機能を診断します。必要に応じて、X線検査、超音波検査、MRI検査などを行い、精密に患部を観察します。

四十肩・五十肩の「急性期」、「慢性期」、「回復期」

四十肩・五十肩は急性期、慢性期、回復期の3つに分けられます。それぞれの期間には、注意点や治療法、リハビリが異なります。

急性期

症状が現れてから約2週間が急性期とされ、この期間には激しい痛みや可動域の急速な低下が見られます。痛みは筋肉を痙攣させ、安静時にも強い痛みが生じ、就寝中に寝返りで目が覚めることもあります。炎症が起こっている時は患部を冷やし、炎症が治まったら温めることが重要ですが、見極めが難しいため、整形外科で診察を受け、適切な手当をすることが大切です。

慢性期

急性期が過ぎると、痛みは和らぎますが、肩関節の可動域は狭まったまま約半年ほど続く慢性期となります。この時期も、夜間や横になる時など肩に負担がかかると痛みが現れることがあるため、注意が必要です。就寝時には枕やクッションを使って肩への負担を軽減しましょう。当院では、生活の工夫についても丁寧にアドバイスを行っています。

回復期

半年が過ぎると、痛みがほとんどなくなる回復期に入ります。この時期には肩の動きが徐々に回復しますが、動かさないでいると筋力が低下し、可動域が狭まったままになります。したがって、可動域を広げるためのリハビリテーションが重要です。

治療法

ハイドロリリース(筋膜リリース)

ハイドロリリース(筋膜リリース)強い痛みがあり日常生活に支障をきたしている場合、ハイドロリリースという注射による治療法が有効です。この治療法は、筋肉を包む筋膜の部分に注射針をピンポイントで合わせて薬液を注入します。正確に針を刺すために、超音波装置を使用して位置を決定します。注入する薬液は、生理食塩水に少量の局所麻酔薬を混ぜたものを使用します。これにより、体への負担が少なく、副作用も起こりにくいという特徴があります。また、腱板の癒着も解消できるため、強い痛みの早期改善に効果的です。

運動療法

慢性期に入ると、炎症は治まりますが、肩関節の可動域は狭まったままです。この時期を拘縮期とも呼びます。拘縮期には、少しずつ肩関節周辺のストレッチを開始することが重要です。ただし、無理をすると再び炎症が起こり、痛みが再発する可能性があるため、肩周辺を温めて血行を改善することを中心に、軽い運動に留めます。

回復期に入ると症状が徐々に改善してきます。この時期には、適切な運動を行い肩の可動域を広げることが大切です。当院では、医師と理学療法士が連携して、患者様の状態に応じた運動療法のプログラムを組んでいます。また、通院終了後も自宅でできるストレッチなどのセルフケアを指導し、以前の日常生活を取り戻すまでサポートします。

物理療法

物理療法は、運動療法と共に理学療法士の活動分野です。電気や温熱などの物理的な治療器具や装具を使った治療法が含まれます。赤外線、マイクロ波、低周波、干渉波などを使用して血行を改善し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。また、サポーターなどの装具を使って負担を軽減することもあります。医師の診断のもと、国家資格を持った理学療法士が患者様の症状や目的に合わせて、これらの器具や装具を使用し、適切な治療を提供します。